データ活用シナリオ vol.4

サードパーティーデータを活用した地方移住リコメンド

-テレワークのための最適な「仕事場」を発見する-

   

概要

新型コロナウイルスを機に、都市部から地方への移住に関心を持つ人が増加していると言われています。内閣府の調査によると、東京23区に住む20代のうち、35.4%の人が地方移住への関心が高まったと答えています。企業もリモートワークやテレワークを推奨しており、地方で仕事をすることは新しい働き方として浸透しようとしています。

 

しかし、地方移住といっても簡単なことではなく、移住する地域の選定は大きな課題です。

都内への距離や気候、食べ物はもちろんのこと、まわりにどんな人が住んでいるかということは過ごしやすさに大きく関係します。

とはいえ、現状、どの地域が自分にとってふさわしい移住場所かを知る方法はなく、人生における一大決断をなかば数少ない選択肢で決めることになりかねません。

 

そこで、本シナリオでは、マーケティング分野で顧客理解のために利用されているサードパーティーデータを活用して、その人が地方移住するのに最適な地域をリコメンドするサービスを考えます。

マーケティングデータの新しい活用として、また地方活性化の新しい施策として、参考になるかと存じます。

  • 課題
      • ・移住希望者にとって適切な地方の場所が不明
      •  

      • ・移住先の住人に関する明確なイメージがない
      •  

      • ・地方自治体による移住促進がうまく進まない
  • 目標
    • ・移住希望者に対してこれまで知り得なかった適合した地方をリコメンド
    •  

    • ・移住希望者が移住を決めるための詳細な情報提供
    •  

    • ・地方自治体による移住促進施策の効率化

サービスシナリオ

本サービスでは、地域を理解するためにサードパーティーデータを活用します。マーケティング分野では顧客理解のために顧客データ(ファーストパーティデータ)を蓄積し、様々な角度から分析し、時にはアンケートなどの定量・定性調査(セカンドパーティデータの収集)も実施しながら、具体的な顧客像を形作ろうとしており、その中でさらにそれらのデータと組み合わせて分析の精度を高めるために顧客と直接的な関係はないが関連性のあるデータ(サードパーティデータ)を第三者から購入することが普及しています。

 

その理由は、商品やサービスを知る段階で、サードパーティデータを利用し対象の実態を事前に把握することが効果的だからです。サードパーティデータを有効活用することによりファーストパーティーデータやセカンドパーティーデータだけでは得られない情報を補完し、まだ接点のないユーザーの顧客像やペルソナをより立体的に捉えることが可能となります。

 

ここでは、サードパーティーデータとしてエクスペリアンジャパン株式会社が提供している Mosaic Japan 2015(以下「Mosaic」という)のデータを用います。

本データは日本の各町丁目を14グループ/52タイプ/220セグメントに分類しており、コンシューマーや世帯のデモグラフィクス、選択、嗜好などの可視化を実現しています。地域に住んでいる富裕層を特定するためのデータとして使われている研究もあり、住人の特徴を調べるために適切と考えられます。

 


図:顧客を見える化するMosaic Japan 2015

 
 

本サービスは、このMosaicデータを活用して、2つの方法で情報提供を行います。

 

一つは、移住希望者への地域に関する情報提供です。

専用サイトやアプリを用意し、移住を希望する地域にどのような人が住んでいるかを調べることができるようにします。移住希望者はその地域に関する情報を詳しく知ることができ、移住にかかる不安の一部を取り除くことができます。
また、移住したい地域がわからない人に対しては「こんな地方に移住したい」という質問に答えてもらうことで、おすすめの地域を提案する機能も備えます。移住をしたいとぼんやりと考えているが地域のことをよく知らない人にとっては大変貴重な情報となります。

 

もう一つは、移住を促進したい地域へのマーケティング情報提供です。

上記のサイトやアプリを使用する際に使用者の地域を尋ねておくと、残ったログデータにより、どこに住んでいる人がどんな人が、該当する地域を調べているかを知ることが可能になります。このデータを活用してその地域に住んでいる人に対して広告を出すことで効率的なアプローチが可能となります。

 

本サービスでは、Mosaicデータのみで考えましたが、Mosaicデータは共通IDによってデータ統合が可能であり、希望地域への移動時間がわかる乗り換え情報データや、希望の間取りと価格帯がわかる家賃相場データ、過去の気象情報データを組み合わせることにより、さらなる情報提供が可能となります。
これは、これから増えていく地方移住者にとって有用な情報を知ることができるサービスとなるだけでなく、地方開発を進めたい企業にとっての有用な情報になると考えられます。

 


図:サードパーティーデータを活用した移住情報提供サービス

 

  • 特徴①

    移住希望者に対して、Mosaicデータを活用した移住地域に関する情報提供
  • 特徴②

    移住を促進したい地域に対して、ログデータによるマーケティング情報の提供
  • 特徴③

    サードパーティーデータを活用した移住地域のマッチング

期待される効果・発展性

  • ・乗り換えデータや家賃相場データ、気象データなどを組み合わせた総合的な情報提供
  •  

  • ・ミスマッチの少ない地方移住の増加およびテレワーク推進による地方の活性化
  •  

  • ・地方開発企業における新たな開発地域の発見

まとめ

以上、サードパーティーデータを活用した地方移住に役立つ情報提供により、最適な地域をリコメンドするサービスを考えました。
DXの時流により今ではデータの各種分析や外部ベンダーを交えたデジタル施策の検討は当たり前になりました。この流れはさらに加速し新たなサービス・技術・データは今後も生まれ続けると考えられます。

 
マーケティングデータはBtoCの企業だけが使用するものという固定観念を捨てて、地方自治体や不動産業界がデータ活用する方法としての参考となれば幸いです。

 

参考

  • ・内閣府政策統括官、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月21日)
  • ・宗健・新井優太(2018)、富裕層および団地の集積が家賃に与える影響、都市住宅学103号 AUTUMN

 
 
 
   


   

本サービスで紹介したMosaicデータのほか、様々なデータが掲載されているデータ取引市場サービス「EverySense Pro」はこちら。