気象情報の効率的採取とデータ市場取引
概要
公共データ、特に政府関係機関のような公共機関から提供される人口データや地理データなどの各種統計は、主にマクロな地域区画ごとに算出されています。しかし、マクロな区画規模データの利活用をするとなった場合、ミクロな規模での経緯度、海抜、灌漑システム、植生状況、人間活動の規模などを媒介変数として、局所的な土地の特徴が対象データ変数に与える影響と相関を無視することになります。特に、気象データはその代表的なデータであり、一般に気象庁が発表する広域気象データから局所的な詳細データを正確に把握することは困難です。
そこで、より狭い範囲内に気象観測センサー及びノードを設置し、リアルタイムでの気象情報観測を可能にすることにより、採取されたデータを元に、提供者、需要者、そして管理者の三者間で効率的かつ相互互恵的な取引エコシステムを構築することが可能になります。
また、自治体の視点から見たときに、安全で便利なまちづくりを目指すタウンマネージメントのための局所的気象観測を低コストかつ短期間で行えるようになります。そうすることで、経済的価値を有する気象データの公共性を誰もが創造し、享受出来るようになると同時に、業務の中で生まれるデータと気象データを組み合わせて、生活やビジネスの中で溢れる気候リスク及びビジネスチャンスをより高い精度で定量的に把握することができるようになります。
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- 課題
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- ・局所的な気象データの不存在
- ・ミクロなデータを取得するコスト
- ・生活やビジネスにおける気候リスク
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- 目標
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- ・ミクロな気象データによる精度の高い分析
- ・相互互恵的なマネタイズ体系による低コストなタウンマネージメント
- ・気象データ利活用の更なる促進による生活・ビジネス上の不確実性の把握
サービスシナリオ
このシナリオでは、データ提供者側が、2つのデバイスを必要とします。1つは、核世帯でも気軽に住居や建物の屋外部に設置できるリアルタイム気象動態観測センサー。もう1つは、屋内に設置型のWIFIルーターに直接接続することができる提供者専用ノードです。この2つをリンクさせ、リアルタイムでの気象状況を随時把握します。
逐次採取されるデータは、データ受領者側が管理する市場ノードの方で、各種データの収集及び整理、そして定量気象データの加工(特に、気温、降水量、湿度、気圧、紫外線、風速、風向)が継続的に行われます。その市場ノードで集約及び加工されたデータは、データ提供者側のノードに返送され、価格や条件などを決めたのちに、需要者がいるデータ市場にて公開されます。こうして、環境要因が考慮された、より精度が高い気象データを需要する企業や自治体、個人と取引することになります。また、データ提供者側が採取した気象データは、提供者側自身でも閲覧し、気象情報として日常生活の中で活用できます。
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特徴①
- 環境要因が細部まで細かく考慮された精度の高い気象データを取引の材料とすることで、データ利活用の事例及びデータ提供者及び受領者双方にとって恒常的な需給関係が生まれる。
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特徴②
- データ提供者側で設置を必要とするデバイスの費用を最小限に抑え、設置の簡易性を最大限に上げることで、サービス開始に至るまでの障壁を取り除ける。
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特徴③
- データを取引する全ての過程における取引情報や支払いの情報往来の仕組みに、ブロックチェーンを使用することで、より安全性と利便性が保証される。
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期待される効果・発展性
- ・居住地の地理的環境を考慮した気象情報の最適化及びその正確性向上
- ・天気と相関する有益なパラメーター情報及びその有益な活用事例の増加
- ・観測データの蓄積により予測を可能にすることによるより効率的なタウンマネージメント
まとめ
気象の変化は、特定の土地の特性や傾向によって、局所的に異なるものになりやすく、上空からの情報では容易に特定できない難しさがあります。そこで、下からの測定を行い、部分的な測定データを集約することで、利活用の幅と精度が広がるとともに、データ市場に流通することで、データそのものに経済的な価値を見出し、恒常的に存在する需要から、長期的に取引をすることができます。
また最近、企業によっては、m単位での気象データに対する需要も出てきています。気象データが今のところkm単位での提供が一般的なままですが、人流データは100m規模の密度のデータ提供しておりデータに加工が必要なためです。ここに、今後の進歩と普及が期待されます。
参考
エブリセンスの運営するデータ取引市場サービス「EverySense Pro」はこちら。