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2023.04.10 news

データ利用権取引市場の実証実験について

エブリセンスジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:眞野 浩、以下「エブリセンス」)は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の「分野間データ連携基盤技術の社会実装に向けた外部仕様書の作成・公開および相互接続性実証」事業にて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より日本電気株式会社(*1)とともに採択を受け、弊社が担当する実証テーマ「(エ)データ取引で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証」において、分野を超えた信頼のあるデータ取引を支援し社会におけるデータの流動性を高める仕組みとして、データ利用権取引市場システムを開発し、実証実験を行いました。

 

■背景

エブリセンスは、データ保有者とデータの活用を希望する者を仲介し、売買等によるデータの取引を公平公正に支援する仕組みとして「データ取引市場EverySense Pro」を運営しております。「データ取引市場」とは、我が国が掲げるSociety 5.0やデータ駆動型社会の実現に寄与する社会インフラとして位置付けられ、一般社団法人データ社会推進協議会により、IEEE P3800として国際標準化に向けた検討が行われているものです。 しかし、データ駆動型社会においてデータ流通を阻害する要因のひとつとして、無体物であるデータは一般的に民法上の権利(所有権、財産権等)保護の対象外となることが挙げられます。そこで、データ保有者が第三者にデータを提供し、データを提供された者が、新たな経済活動に向けてそのデータを利用し財を得るという一連の営みにおいて、「データを利用する権利」を権利証書化し取引の対象とするとともに、信頼できる第三者機関(以下、「TTP」という。)によりその権利が保証される「データ利用権取引市場システム」を新たに開発し実証実験を行いました。

 

■実証の概要

データ利用権取引市場システムでは、データ利用に関わる権利の条件を標準化した「データ利用権証」と対象データを組み合わせて取引します。また、TTPがデータを利用する権利の保証と、取引の関与者それぞれの真正性、データの完全性を保証することにより、安心・安全かつ効率的なデータ取引を支援します。加えて、「データ利用権証」を取引の対象とすることで、データ提供者はデータ収集前に売買を成立させることができ事業資金の調達ができることも期待されます。 本実証では、データブローカーとしてコンサルティングファームを始めとする民間企業に協力いただき、具体的な業態、業務、データの提供・活用を想定してデータ利用権取引市場システムの機能を操作していただき、利用権証の生成、売買、利用権の行使が可能であることを確認しました。
実証後のアンケートではすべての回答者が、データ利用権取引市場の仕組みが現在のデータ取引における課題の解決に資すると回答しました。今後、本実証実験で対象外とした機能の追加開発やUXの改善、電子署名技術を提供する事業者との連携により、可能性・有用性をさらに向上させ商用化を目指します。

 

■実証に参加した企業からのコメント

世界中でDX・AIの進化が加速度的に進む一方、分析などの基となるデジタルデータについては市場での競争取引がないことから価格の上乗せが起こり易くデータの寡占化やブロック化が進み調達が難しい時代になっています。弊社はAIや金融工学を核に金融サービスの提案構築をしており、さまざまな良質なデータを適正な価格で必要とします。実証では随所に取引の不安を解消する工夫を確認しました。データ流通が活発な時代の実現を期待しています。

株式会社MILIZE 運用投資DXグループ 沼田 茂男 氏

 

実証実験により、データ利用権を使ったデータ流通の可能性が理解でき、有意義な体験でした。利用権取引市場は株式売買に似ており、初心者でも理解しやすい点は利点であると思います。データが無体物で所有権等が不明確であるという課題に対して、データ利用権によって解決策が提供される可能性があると認識しています。今後、データ利用権取引市場の創設によってデータ流通ビジネスの発展が期待でき、非常に興味深い実証実験でした。

PwCコンサルティング合同会社 テクノロジー&デジタルコンサルティング データ&アナリティクス 辻岡 謙一氏

 

データ利用権取引市場は、これまでデータ流通の重要な課題である、データ取引の流動性確保や、データ提供に関する投資の不足といった課題を解決する糸口となることが見込まれています。今回の実証実験では、データ利用権取引市場のシステムを実際に操作することで、こうした課題解決につながることを確認しました。今後とも研究・実証を継続することで、データ利用権取引市場の発展・拡大に寄与したいと考えています。

SOMPOインスティチュート・プラス株式会社 企画・公共政策グループ 菊武 省造 氏

 

データの活用を支援する機関として、データが生成される現場(提供側)とデータを活用したい現場(利用側)に共通の利益(価値認識)がなければ、活用が進まないことが大きな課題でありました。提供側と利用側を仲介する第三者としてデータ利用権取引システム、ブローカー、各種機能を持つ外部機関が連携しデータ取引を仲介する取り組みであり、データ活用の更なる支援につながるものと期待しております。

インフォコム株式会社 ヘルスケアイノベーション事業本部 森下 正次郎 氏

 

この度、データ利用権取引市場におけるデータ利用権の上場など実証に参加させていただきました。中小企業経営を支援する弊社では、企業の財務、非財務データを元に可視化経営を進め伴走支援をすることで、中小企業への利益に貢献できるエコシステムを構想しております。今回のデータ利用権市場がひとつの糸口となり、さまざまな規模のさまざまなデータの流通が活性化する次世代を期待しております。

株式会社フォーバル アイコン事業本部 きづなPARK推進室 藤本 裕子 氏

 

データ利用権取引市場は、市場運営者やデータブローカーといった第三者が、審査基準に従ってデータ提供者やデータセットの審査を行いますので、データの品質や真偽への不安解消が期待できます。また、市場参加者に対し、データをマネタイズする機会とともに、データの価値発見の機会も提供するものであり、今後の発展に大いに注目しています。

三菱総研DCS株式会社 データテクノロジー部 江見 司 氏

 

■今後の展望

データ利用権取引市場の開発および運営には、仲介機関としての中立性、公平性が重要な要素となります。また、対象データの適正性などを判断し、データ利用権取引市場への上場基準、取り扱うデータブローカーの資格基準などを定める必要があります。 そのためには、引き続きより多くの参加者による実証を継続するとともに、これらの社会実装にむけて必要な基準、ガバナンスについて、広く関係者の意見を集約し、一定のルールづくりを関係者と行う所存です。 加えて、 すでに国際標準化を進めているIEEE P3800および各国のデータ連携関係者とも連携し、国際化も進める所存です。

 

<参考> 菊武 省造 “データ流通の新潮流 データ利用権取引市場の可能性を探る” SOMPOインスティチュート・プラス, 2023.03.17

 

*1 日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼CEO:森田 隆之)
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